お役立ち情報2025.12.3Written by ふなっしーcolumn No.18
AI時代の新しい仕事術:プロンプト最適化で変わるAI活用
近年、ChatGPTをはじめとする生成AIが急速に普及し、ビジネス業務、メディア運用の現場でも「AIをどう活用するか」が問われるようになってきました。
IBC2025で注目!AI活用トレンド
今年の9月にオランダのアムステルダムで開催された、世界最大級の国際放送機器展「IBC2025」に、イノコスも視察に行きましたが、今年は、弊社取り扱いメーカのHarmonic社のエンコーダ製品「XOS」や「VOS360」とAIとの連携についての展示をはじめとして、AIを活用した下記のような展示が多かった印象です。
IBCでのAI関連の展示例:
- ライブ映像の声色をそのままに別の言語に音声吹替
- AIがライブ映像の内容を理解し、広告の挿入チャンスを解析しSCTE-35を挿入
- 動画の内容を読み取り、要約したり、メタデータを自動生成
- 動画のハイライトを作成
Harmonic社 IBC紹介ページ
https://www.harmonicinc.com/video-streaming/events/ibc/
【Harmonic社製品】
他にも、Open AI社の新しい動画生成AI「Sora2」が最近リリースされ、プロンプトを与えるだけで、以前よりもリアルで自然な映像を簡単に生成できることから、SNS上で注目される一方で、日本のアニメなどコンテンツの著作権を無視して生成できる事が問題になるなど、生成AIの問題点もより一層浮き彫りとなりました。
生成AIの進化が急速に進む中で、AIに「どう指示を出すか」が成果を大きく左右するようになっています。本コラムでは、AI活用の基本用語とともに、業務活用のカギとなる「プロンプト最適化」について解説します。
AIにまつわる用語解説
- GPT-5 開発元:OpenAI
- Claude 4.1 開発元:Anthropic
- Grok 5 開発元:xAI(イーロン・マスク氏の企業)
- Gemini 2.5 Pro 開発元:Google DeepMind
- Llama 4 開発元:Meta AI
- Qwen 3 開発元:Alibaba
- Gemma 3 開発元:Google DeepMind
- DeepSeek R1 開発元:DeepSeek(中国のAIスタートアップ)
- 確率的生成の仕組み
LLMは「次に来そうな単語」を確率的に予測して文章を作ります。そのため、 訓練データにない情報を問われると、「それっぽい文章」を創作してしまう。
- 事実検証能力の欠如
モデル自身は「真偽」を判断する能力を持たず、「文脈的に自然な文」を優先します。
- 曖昧な質問やプロンプト
指定が曖昧だと、AIが想像で補完してしまうことがあります。
LLMの仕組み:プロンプトと検索モジュールで精度向上
- ユーザーがプロンプトを入力
↓
- 「検索モジュール」がプロンプトをベクトル化し、
知識ベースから関連情報を検索
↓
- 検索結果(関連テキストなど)をプロンプトに追記してLLMに入力
↓
- LLMが「プロンプト+検索結果」をもとに文脈的に一貫した応答を生成

プロンプトの最適化について
「プロンプトの最適化」とは、LLMへ、コンテキスト(前提となる状況説明)、指示(モデルへの具体的なタスク要請)、入力データ(ユーザーからの生データや質問)、出力形式の指定、例示などを提供し、LLMからの回答揺れを少なくする方法です。
プロンプトを最適化するために含める具体的な内容は下記のものがあります。
判断に使用するデータ
何らかのデータについて回答を求める場合や、回答の参考となるデータがある場合は、プロンプトで提供すると精度が上がります。
判断の前提
例えば、「上記のデータについて以下の手順で判断し、結果をJSONで出力してください。」などの回答に対する前提を記述する。
判断基準
判断を行う上で、判断の順序などを箇条書きで記述する。この際、幾つかの取り方を含む文書は避け、誰が読んでも意味が一意となる文書にすることが重要です。
この部分は、プログラムでいうif文と同じになるのですが、いくつかのデータで判断基準が想定通り動作しているか確認することが重要です。
デバッグ用情報
プロンプトに対してAIが判断した基準を表示させ、プロンプトが想定した通りに機能しているかを確認すると、判断基準を最適化する際に役立ちます。
回答フォーマット
例えばJSONで回答を求める場合、JSONの構造もプロンプトに含めると想定した形式で回答が得られるようになります。構造化された回答を返答させることで、システム内でAIを用いて処理判断する場合に、利用しやすいものとなります。
プロンプトの最適化については、条件を細かく指定することで回答の揺れは少なくなると思いますが、その分処理が遅くなる可能性があります。実際にテストした限りでは、いかに多くのデータに正しく対応できるプロンプトを作成できるかは、トライアンドエラーによる経験値が必要になると感じます。
業務において、使用する場合は、処理ごとにプロンプトの最適化を行ったテンプレートを作成し、共有することが必要となると思います。
イノコスでのAI応用例
最近、イノコスでは自治体や国から発表される緊急情報の「Jアラート」や「Lアラート」を弊社サービスのサイネージ「KAWARA板ネット」に表示することを検証しております。
そこで課題となってるのが、自治体によっては、地域のお祭りの告知などの緊急性が無い情報もLアラートとして送られることがあり、それが緊急情報としてKAWARA板ネットに表示されてしまうことがあります。
そのため、送られてくる情報を何らかしらの方法で、緊急性のある情報のみにフィルタリングする必要がありますが、データ構造の中には緊急かどうかを判断するパラメータが無く、さらにはアラート本文にも緊急性を示す完全一致の文言が無いため、アラートの中の文章の内容や文脈を理解して緊急性を判断する必要があります。
全国から発せられるアラートを毎回、常に人が内容を見て手動で緊急度を判断することは、あまり現実的ではありませんし、なるべく早く出したい情報に対し、人が判断する工程を挟むのも避けたいところです。
- そこで、アラートの情報提供元から与えられる情報をLLMへ提供し、前述の「プロンプトの最適化」を行った指示を与えることで、緊急情報のフィルタリングを行えないか検討しています。
データには緊急性を示す完全に一致する文言が無いため、判断基準となる「プロンプトの最適化」をLLMで行い、これまでに受信した情報を処理させることで、正しい判断を行うことができるか検証をしています。
現在は判断基準となるプロンプトの最適化を行い、これまでに受信した情報を処理させることで正しい判断を行うことができるか検証しています。

さらには、今後、受信されるかもしれない新しい文言についても、プロンプトである程度判断されるようにプロンプトの最適化は重要です。
新しい試みであり、本来必要な情報もフィルタリング対象としてしまうのは問題のため、実用化にはまだまだ試行錯誤が必要です。実用化までには、一定期間ランニングを行い、フィルタリングされた情報とフィルタリング理由を確認し、判断が想定通りだったかどうかを確認する必要がある。
フィルタリングは、あまり強くかけると必要な情報までフィルタリング対象になってしまうため、程度の判断も重要となります。
AIは入力されたプロンプトで学習を行うのか?
- AIを使用する上で、プロンプトに入力した情報の扱いについては注意が必要です。
各AIモデルや有料版・無料版の違いによって入力された情報の扱いは異なりますが、サービスによっては、入力した情報が学習に使用されるものもあります。
機密情報が学習に使用されてそれが公開される自体にもなりかねないので、入力する内容に注意するだけでなく、利用するサービスの利用規約を確認するなど、細心の注意が必要です。
例えば、GoogleのAIの「Genemi」の利用規約 (2025年12月時点) には、無料版と有料版とでそれぞれ下記の記述があり、学習に使用され公開されて問題となる情報を取り扱う場合は、有料版を利用する必要があります。

Google AI StudioのAPIを用いたAIの使用方法
最後に、参考としてGoogleのAIのGenemiを、APIを用いて使用する方法をご紹介します。
1.アカウント作成
https://aistudio.google.com/welcomeにアクセスし、左上のGet startedボタンをクリック。

Google Workspaceのアカウントを持っていれば、アカウント連携により利用可能です。
2.APIキーの取得
左下にある、Get API Keyをクリック。

APIキーを作成ボタンをクリック。

情報を入力し、キーを作成ボタンをクリックすると、APIキーが提供されます。
3.Javascriptでの使用例
ダッシュボードにサンプルコードがある通り、下記コードで実行可能。
import { GoogleGenAI } from "@google/genai";
const ai = new GoogleGenAI({apiKey:[提供されたAPIキー]});
async function main() {
const response = await ai.models.generateContent({
model: "[使用するモデル名]",
contents: "[実行するプロンプト]",
});
console.log(response.text);
}
await main();
AIは万能ではありませんが、正しく使えば日々の業務を大きく効率化できます。
イノコスでは今後も、放送・通信の現場で役立つAI活用の形を探っていきます。
ふなっしー2022年9月にイノコスへ入社。元々「IT」と「映像配信」の分野に強い興味があり、両方の分野で仕事ができるイノコスに惹かれて入社。イノコスに入る前はアメリカで学生をやっており、高校から大学までアメリカで過ごしたイノコスのU.S.逆輸入ファイター。営業チームのメンバーではあるが、技術の仕事もよく任される。社内での愛称は「ふなっしー」。好きな食べ物は寿司。